「ちゃんと触っているはずなのに、反応が出ない」
「いつも同じように施術しているけれど、効果にばらつきがある」
「触診がルーティン化して、手応えを感じなくなってきた」
そんな臨床の違和感を感じたことはありませんか?
私たち治療家は、患者さんの身体に触れることで、構造を見極め、状態を把握し、必要な調整を行います。
つまり、手が最も重要な診断・治療ツールであるにもかかわらず、いつの間にかその触診がただの作業になってしまっていることがあります。
特に、忙しい日常の中で習慣になった施術ルーティンは、「考えずにこなす」方向へと流されがちです。
でも、それでは感じる力=感覚は育ちません。
本記事では、平井塾で提唱しているFJA(ファシアティック・ジョイント・アプローチ)の思考法をベースに、「感覚を磨くのではなく、育てる」ための日常臨床の在り方をお伝えします。
「触れてもわからない」から、「触れたら見える」へ。
その感覚を取り戻すために、あなたの触診を見直してみませんか?
触診が作業になる瞬間とは

形は合っているのに、結果が出ない理由
触診が形としては「正しくできている」はずなのに、なぜか結果が伴わない。そんな経験はありませんか?
・触れた場所は合っている
・押す方向も間違っていない
・技術的な操作も習った通りに行っている
それでも患者さんの反応が鈍かったり、効果にバラつきがある。
そのときに見直すべきなのは、「手技の正確さ」ではなく「感覚の働かせ方」です。
実は、形が合っているという安心感が、いつの間にか「考えなくてもできる」=作業化につながってしまうことがあります。
臨床における触診は、「感じ取る」ための能動的な行為であって、「確認する」ための作業ではないのです。
見逃されがちな触れる目的の曖昧さ
治療家が抱えやすい落とし穴の一つが、「何のために触れているのか?」が曖昧なまま、ルーティン化された手技を続けてしまうことです。
・ただ触って「硬さ」を感じる
・関節を動かして「可動域」を見る
・筋肉を押して「反応」を探る
一見すると、正しい触診のように思えますが、「その情報をどう臨床に活かすのか?」という思考の回路が働いていなければ、
それは単なる確認作業に過ぎません。
FJAの考え方では、触れることは「情報収集」であり、その情報をもとに「仮説を立て、微調整で反応を確かめる」というプロセスが組み込まれています。
つまり、触診とは「診る」ことであり、目的と意図を持たない触れ方は、感覚の成長を止めてしまうのです。
感覚は磨くものではなく、育てるもの

知識や技術ではなく、感覚が育つ瞬間
私たち治療家は、技術や知識を「習得する」ことには熱心ですが、感覚を育てるという視点を持つ機会は意外と少ないのではないでしょうか。
触診における感覚とは、最初から備わっているものではなく、触れて・観察して・反応を見て・微調整するというプロセスを何百回、何千回と繰り返す中で、少しずつ育っていくものです。
たとえば、
・最初は何も感じなかった組織に、微妙な張力を感じられるようになる
・以前は気づかなかった左右差が、自然に浮かび上がってくる
・手を置いただけで「この関節、遊びがないな」とわかるようになる
こうした変化は、触診力が上がったというより、感覚が育った証拠です。
FJAの臨床では、この感覚の成長プロセスを大切にし、決して「テクニックの正解」だけを教えることはありません。
感性を失わせる「正しさの呪縛」
多くの治療家が感覚を鈍らせてしまう原因の一つが、「正しいやり方」にとらわれすぎることです。
もちろん、解剖学や力学の理解は大切です。
しかし、正しさばかりを追い求めていると、「感じる力」よりも「正解をなぞる力」に意識が傾き、触診が再現性のないルーティンへと変わってしまいます。
FJAでは、「この関節にはこの手技をする」という固定概念ではなく、「構造を観察し、触れて反応を見ながら、最適な方向性を導き出す」という、考える手を育てることを重視しています。
つまり、正しいかどうかではなく、「合っているかどうか」を手で確かめる力こそが、感覚を育てる上で欠かせない視点なのです。
FJAが教えてくれた観察と仮説という考え方

ただ押すな、構造を読め
FJA(ファシアティック・ジョイント・アプローチ)は、単なる手技やテクニックではなく、「構造を読み解く臨床思考」です。
従来の施術では、
「この筋肉が硬いから、ほぐす」
「この関節が動かないから、動かす」
というように、目の前の現象に対して反射的に手が動きがちです。
しかしFJAでは、現象に対してすぐに処置をするのではなく、まず観察から始めることを徹底します。
・どの構造に異常な張力がかかっているのか
・皮膚や筋膜の滑走がどこで止まっているのか
・関節の「遊び」はどの方向に制限されているのか
こうした情報を「手」で感じ取り、その上で「この構造に、こういう負荷がかかっていそうだ」という仮説を立てる。
つまり、ただ押すのではなく、構造と対話する観察者であることが、FJAの大前提です。
反応こそが、臨床の唯一の答え
FJAの考え方で特に重要なのが、「反応がすべて」という姿勢です。
理論や知識、経験則ももちろん大切ですが、最終的に手技が合っていたかどうかを判断するのは、目の前の患者さんの反応だけです。
・わずかに可動域が広がる
・組織の抵抗がスッと抜ける
・姿勢の左右差が整う
・呼吸が深くなる
これらの反応が出たとき、初めて「仮説が正しかった」「触診が意味を持った」と言えるのです。
つまり、FJAでは「触って、反応を見て、調整し直す」という思考ループを回しながら、感覚の精度をリアルタイムで高めていく仕組みが組み込まれているのです。
この観察→仮説→反応→再調整というサイクルこそが、日々の臨床で感じる手を育てるFJAの真骨頂です。
日常に感覚トレーニングを組み込む方法

毎日の触診に「問い」を持ち込む
感覚を育てる最大の近道は、日常の触診を観察と検証の場に変えることです。
たとえば、同じ肩関節に触れるときでも、
・「この滑走の悪さは筋膜由来か?関節包か?」
・「反対側と比べてどの層で違和感が出ているか?」
・「今の圧で反応が出ないのは、方向がズレているからか?」
こうした問いを持ちながら触診するだけで、手の感覚は飛躍的に磨かれていきます。
「とりあえず触る」から「仮説をもって触る」へ。
このわずかな意識の違いが、手の解像度を大きく変えるのです。
FJA的な触診では、必ずこの問いを持ったアプローチを習慣化します。
なぜなら、問いの質=観察の深さ=臨床の質だからです。
結果ではなくプロセスの変化を追う
多くの治療家が「結果」にばかり目を向けがちですが、感覚を育てる上で本当に見るべきはプロセスの変化です。
・施術前よりも皮膚のテンションがどう変わったか
・1回目と2回目の触診で、滑走にどんな違いが出たか
・微調整のあと、呼吸や表情にどんな微反応があったか
こうした細かな変化の兆しに敏感になることで、「この触れ方は合っている」「今の圧はズレている」といった手の中の検証と学習が、毎回の施術に組み込まれていきます。
つまり、日常の施術こそが最高の感覚トレーニングの場なのです。
FJAでは、この臨床的な検証ループを何度も繰り返すことで、ただの「施術」ではなく、成長する触診を構築していきます。
「感じる手」はルーティンでしか育たない

FJA×姿勢循環整体が生み出す感覚の再現性
感覚は、一度わかったら終わりではありません。
むしろ、「繰り返すことで育ち、再現性を持つ」ことこそが臨床感覚の本質です。
平井塾では、FJAに加え「姿勢循環整体」というルーティン手技を用いることで、日々の臨床の中に自然と感覚トレーニングを組み込む仕組みをつくっています。
姿勢循環整体では、全身の循環と構造にアプローチしながら、毎回「同じ流れ」「同じ順序」で身体を評価・調整していきます。
それによって、
- 組織の沈み込みの違い
- 筋膜の滑走具合
- 関節可動域の変化
- 呼吸や表情の反応
といった情報を、手の中で比較・検証できる環境が整うのです。
つまり、ルーティンだからこそ、微細な違いに気づき、手の感度が上がり、感覚が育つ。
FJAで構造を見抜く思考を育て、姿勢循環整体で手の精度と再現性を鍛える。
この掛け算が、毎日の臨床そのものを「感覚トレーニングの場」に変えるのです。
毎日、同じことを深めることの価値
技術を学び始めたばかりの頃は、
「もっといろんな手技を覚えなきゃ」
「同じことを繰り返すのは意味がない」
と思いがちです。
しかし実際は、同じ動作をどれだけ深く感じ取れるかが、治療家としての差になります。
同じ動作でも、
・以前は感じなかった滑走制限が見えるようになる
・微妙な圧加減で反応が大きく変わる
・関節の遊びの変化を追えるようになる
これらは、感覚の深まりによって初めて起こる変化です。
治療家として本物の臨床力を身につけたいなら、「たくさん学ぶ」ではなく、「同じことを、深く感じる」こと。
それが、感じる手を育てる一番確かな道なのです。
まとめ:感覚が変わると、治療が変わる

治療力の差は感覚の深度で決まる
同じ技術を使っていても、結果が出る人と出ない人がいる。
同じ場所を触っていても、患者さんの反応が大きく違う。
その差は、「知識量」や「施術歴」ではなく、手の感覚の深さにあると私は思います。
FJAの現場では、こうした感覚の違いが如実に現れます。
触れたときの手の位置、圧の方向、反応の受け取り方。
そこに迷いや曖昧さがあれば、施術は決して深く届きません。
だからこそ、感覚を「磨こう」とするのではなく、「育てる習慣」を日常に取り入れることが、臨床家として本物の力をつけるために必要なのです。
あなたの手は、今、何を感じ取っていますか?
触診は、最も原始的で、最も洗練された評価手段です。
機械では測れない、生身の人間の微細な変化をキャッチできる唯一の道具。
その手が、
・今、何に反応しているのか?
・なぜ、その方向には緩まないのか?
・この違和感は、どこから来ているのか?
そういった問いを持ちながら、日々の臨床に向き合うことで、
ただ触る手は、感じて治す手へと進化します。
「その触診、作業になっていませんか?」
この問いに、もう一度あなた自身が向き合うことで、今の施術が、もっと深く、もっと面白くなっていくはずです。
▶ 「触れても、わからない」を変えるFJAの臨床思考を学びませんか?
FJA(ファシアティック・ジョイント・アプローチ)は、ただの手技ではなく、構造を観察し、反応で仮説を検証する感覚育成型メソッドです。
知識やテクニックだけで限界を感じているなら、あなたに足りないのは「感じる思考」かもしれません。
● 見えない構造エラーを見抜きたい
● 治療の再現性を高めたい
● 日々の臨床を感覚トレーニングに変えたい
そんなあなたのために、FJA講座をご用意しています。
関連記事
➡︎ 治療家として大切なことは、すべて手が教えてくれた
➡︎ 治療家の武器は手にあり|新人が身につけたい触診の基本
投稿者情報【平井 大樹】

株式会社美絆 代表取締役。みゅう整骨院 代表。整体教育機関ゴッドハンドへの道「平井塾」代表。柔道整復師・スポーツトレーナー。
「治療家を職業から誇りへ」を信念に、紹介だけで予約が埋まる「本物の治療家」を育てる平井塾を主宰。施術歴20年、延べ10万人以上を施術し、リピート率98.5%、新規予約は5年待ちという圧倒的な実績を持つ。
【平井塾が生まれた理由】
高校卒業後、スポーツトレーナーの世界で「本当に人の役に立ちたい」という強い想いを胸に治療家の道へ。雇われ院長時代には、1日来院数255名という日本一の実績を達成。しかし、数字を追い求める中で、本当にやりたかったこととのギャップに悩み、独立後は広告を一切使わない「紹介のみ」の治療院を確立しました。
その経験から、「技術だけでなく、患者さんの心に寄り添う在り方こそが、真のゴッドハンドへの道である」と確信。2020年から始めたセミナー事業も、広告を一切使わず、口コミだけで年間91回開催、延べ770名もの治療家が集まる場所となりました。
【平井大樹の圧倒的な実績】
私が提唱する「在り方で信頼され、結果で指名される」という哲学は、以下の圧倒的な実績によって証明できる確信しています。
- 長期継続患者数:私が施術している毎月211人の患者様のうち、5年以上継続が211名,そのうち10年以上が93名。これは、一般的な治療院が測る「初回リピート率」をはるかに超える、揺るぎない信頼の証です。当社独自の2年継続率では49.7%という圧倒的な実績を数字で証明しています。
- 独自のメソッド:FJA(ファシアティックジョイントアプローチ)や姿勢循環整体など、単なる技術ではなく、痛みの根本原因を「動きの連鎖」から見抜く独自の臨床思考モデルを確立しています。
- 全国規模の実績:東京、大阪、横浜、宮崎など全国9社の整骨院グループで社員研修を担当。組織の課題に客観的に向き合い、治療家として誇りを持って働ける社員を育成しています。
- 安定した組織運営:私が経営する院のスタッフ定着率は平均7年以上。これは、理念と実践が一致したマネジメントの証明です。
「在り方で信頼され、結果で指名される」
平井塾は、技術と人間性の両輪を磨き、治療家として誇りを持って生きる仲間を増やすことを目標としています。このブログが、あなたの治療家人生を変える一歩となれば幸いです。

